ちゅーりっぷの







「副長」
 いつになく硬い声で呼びかけてきた部下は、いつになく真剣な面持ちをしていた。普段は言い付けた仕事の半分をミントンに費やすような馬鹿だが、あとの半分はなかなか使える切れ者である。切れ者の顔をした男に土方は緊張感を持って対峙した。無言で、続きを促す。
 監察の仕事を与えた男はそれでも少し躊躇したようだった。だが、それを振り切って土方の顔を見据える。そうして開いた口から飛び出した言葉は――。
「俺ともちゅーぷり撮って下さい」
 ――だった。




「ああ、いいぜ」
「本当っすか!?」
 色好い返事に山崎は喜色満面となる。だが、そんな天国が長く続くわけがない。「ただし――」土方はやおら抜刀するとそれを勢いよく畳に突き立てた。
「支払いはテメーの命だ」
 凄みを効かせて睨み付けてやる。土方はいつもいつも喚き立てるだけではない。むしろ、下の者にとってはこの氷のような冷たさこそが「鬼の副長」と呼ばれる所以であった。
 これくらい脅せば、馬鹿な部下の一人や二人簡単に言うことを聞かせられる。当然、山崎もだ。だが、その時の山崎は怯まなかった。
「ええ。構いません」
 きっぱりと言い切られ、土方の方が僅かに怯んだ。
「テメー本気か。俺ァ冗談じゃねェぞ」
「本気です」
「叩ッ斬るっつってんだぞ」
「本望です」
 それで貴方とちゅーぷりが撮れるなら。
 土方の背中に冷たい汗が浮いた。得体の知れない生き物が、目の前に、居る。だらだらと冷や汗をかく――だが顔だけはそれを悟られぬようポーカーフェイスである――土方に、山崎は尚も言った。
「あ、でも斬るのはちゅーぷり撮った後にして下さい」





 その後、土方を伴ってゲームセンターに出向いた山崎だったが、目的の機械が悉く目の前で爆発し大いに戦いた。
『近頃は物騒でいけねェや、プリ機に爆弾がしかけられる世の中になっちまって』
 とは真選組隊長の言葉である。


 ちなみに『アンタ今撃ったろ!? そのバズーカで撃ったろォォォ!!』と山崎が叫んでいたとか、『何言ってんだィ』と答えた隊長の手にした筒から白い煙が立ち上っていたと――サングラスをかけた元店員は語ったそうだ。




050504

ハイ!山土おまけでした。
邪魔が入ってるけど……ね!(笑)

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050505
おまけのおまけ