三十三訓表紙小ネタ

 


1.前哨戦


「何でてめェが俺の部屋にいんだよ」
「何、不満? 今回の表紙撮影ここでやるんだもん。なんなら多串くん出なくてもいいけど」
「誰も出ねーとは言ってねーよ。何でてめーがこの部屋に居るのか聞いてんじゃねーか」
「ああ、それは……」
 と、そこで銀時はベルトを外し始める。突然の行動に土方は焦った。
「ッてめー! 何脱いでんだコラァ!!」
「あ? だって脱がなきゃ着れねーだろ。何言ってんの」
「イミフメイなこと言ってんじゃねーよ!」
「多串君もさあ、早く脱げって」
 しゅ、と首のスカーフを抜き取られた。ベストのファスナーも降ろされ、上着を落とされかけて、土方は抵抗する。
「なっ、何しやがるァ!」
「多串君聞いてないの?」
「何をだ」
「今回の表紙、俺らとお前らの衣装交換すんの。俺はお前と」
「……ハァ!?」
「だから脱げってー」
「やめろっ! 触んじゃねー! 一人でやる!」
「あ、そ。んじゃ、どうぞ」
 そう言って銀時が羽織っていた着物を脱ぎ始めるものだから、土方も苦虫を噛みつぶしたような顔をしながら、諦めて自分の衣装に手をかける。
「ああ、多串君の服大変そうだな。持ってやろーか」
 別に大変というわけでもないのだが、どうせ脱いでもすぐ銀時が着るのならば、わざわざハンガーにかけることもあるまい。土方はそう判断して脱いだ上着を銀時へと渡した。そのままベストも脱ぎ、ベルトをとって刀を外す。シャツのボタンを外し終えたところで、ふと気づいた。
 勢いよく顔を上げれば、にやついた顔の坂田銀時。上に羽織った着物以外、衣服を脱いだ形跡がない。
 かあっと土方の頬に朱が差した。
「てめー、見てんじゃねェエエエ!!!」
「え? 多串君、俺のためにストリップショーしてくれてたんじゃねーの?」
「お前いつか殺してやるからな!」

 


2.着替え編(この部分だけ銀ちゃん視点)


「……なんかさ」
「あ?」
「お互い上半身裸てのもなんかやらしくない?」
「はぁ?」
「結構いい体してんだ」
「……てめーこそ」
 あ、その顔。嫉妬っぽい。俺の方がガタイが良いもんだからか。可愛いねえ。
「多串君の匂いがする……」
「くだらねェこと言ってねぇーで早く着ろ!!」
 脱ぎ立てほやほやの多串くんのシャツをくんくんしていたら、怒られた。何てめー変態じみたことやってんだ、嫌がらせにも程があらァ! と憤慨している。
 別に嫌がらせじゃないんだけどね。でもそれを口に出すのはやめた。だって本当の変態だと思われたら、折角の服を取り上げられてしまいそうだ。
「オラ、ズボン寄越さねーか」
「……なんで脱ぐ前に言うの?」
「なんで脱いでから言わなきゃならねーんだよ」
「パンツと生足が見れると思っ……嘘嘘冗談だって!」
「てめーはもうこっち見んな。後ろ向いてろ」
「え、何。じゃあ俺だけストリップショー?」
「誰がてめーのストリップなんぞ見るかァ! 俺だって後ろ向いてるから。さっさとしろよ」
 これ以上粘っても無理か、と思って後ろを向いた。ズボンを脱いで放り投げたら「いきなり投げてんじゃねーよ!」と怒鳴られる。怒りっぽいなあほんとにもう。
 ジー、とかすかにファスナーを降ろす音がして、続いた衣擦れの音にらしくなくドキドキしてきた。
 あ、あれ? そんな、俺。思春期の餓鬼じゃあるまいし。
 背後を伺えば少しかがんだ気配がした。脱・い・で・る!!
 ほんの少しだけ、ほんの少しだけだから、と言い訳しながらちらりと後ろを振り返る。
「うぉ!」
「あ? てめっ、今何しやがった」
「ナニモシテマセン」
「嘘つくな!」
 何もしてないって、ホントだって。ただ、ありえない程白い生足見ちゃっただけですゥ!
 本当、らしくないよ俺。何ドキドキしてんの。ありえないって。
 答えずにいたら多串君はとりあえず矛を収めたようだった。本人あまり納得はしていないようだったけれど。そしてまた衣擦れの音。




「あのー、多串くん。このスカーフ、上手く結べないんですけど」
「ああ? って何でそんなぐちゃぐちゃになってんだよ! 貸してみろ」
「あー、なんか……」
「あ?」
「俺達夫婦みたい……って苦しいんですけど」
「そりゃそうだろうなァ、締めてんだから」
「くくく苦しいってオイちょっとっ、おおぐしぐん!?」
 とりあえず死ぬ前に手は緩めてくれたけど。なかなか過激な奥さんだ、多串君。



3.撮影前風景編


 変わり果てた近藤の姿を見て土方は絶句した。
「どうしたトシ? 早く撮影しちまおーぜ」
 沖田の格好もおかしい。着ぐるみってなんだ着ぐるみって。
「なんですかィ土方さん眉間の皺がいつもより多いですぜ」



 これはお互いの衣装を交換するんじゃなかったのか?
 なんだ? じゃああのチャイナ娘は厳つい体の近藤さんにジャストフィットな服を着てるってのか? 総悟の着ている着ぐるみはあの巨大生物の皮か?
「あ、副長……?」
 タッタカターっと新八が駆け寄ってくる。いや、違う。新八の格好をした山崎だ。眼鏡なんてかけているから山崎っぽく見えない。
「副長その衣装どうしたんですか」
 土方は答えない。なんとなく、話の先が見えてきたからだ。
「副長と坂田さんの衣装、あっちに残ってたんですけど」
「なんか、この衣装よれてないですか? ちゃんと新品用意するって言ってたのに」
「あれー……? おかしいですよね。衣装だぶってたのかな」
 銀時の服はポケットを探っても何も出てこない。煙草が吸いたいのに。
「山崎」
「はい?」
「とりあえず殴らせろ」
「えええっ!? 俺何もしてないじゃないですか!!」
「うるせェ!!」
「ちょっ、困りますこれ貸し衣装なんだからーー!!」



「トシはどうしたんだ? もうじき撮影も始まるってのに」
「土方さんが着てんのは本物でさァ」
「えっ、衣装じゃないんですか?」
 用意された衣装ではなく今着ている物を交換しあうなんて、いつのまにあの二人そんな仲良くなったんだろうと新八は疑問に思う。
「なァトシ! 早く撮影すましちまおーぜ! こっち来い!」
 近藤が呼ぶと、山崎を追いかけ回していた土方が、渋々といった様子で立ち止まった。
「なんかすごい機嫌悪いみたいですけど大丈夫なんですか?」
「心配いらねーさ、トシなら」
「撮影始まるとノリノリですからねィ。現金なものでさァ」




040810
三十三訓表紙は美味しゅうございました。
衣装交換してるの!ってメールを送ったらば
「交換するからには脱がねばなるまい」
「ひじきのストリップ」
と萌え萌えなお返事をくれたぴくさんに感謝。
萌えをありがとうー!

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